堕ちていく二人
反撃


桂司が自宅マンションへ帰ってきたのは一ヶ月後の夜だった。
裕也は既にぐっすりと眠っていた。

玲子が自分の部屋で音楽を聴いているところへ、珍しく桂司が入ってきて話しがあると言った。
玲子と桂司はリビングへ行き、ソファに向き合って座った。

「話しって何よ」

玲子は邪魔くさそうに言った。

「僕と離婚してくれ」

「冗談じゃないわ。そんな簡単に離婚なんかしてやるもんですか。
裕也が大人になるまではしっかりと働いてもらうからね」

「お金なら纏まった額を渡すから」

「お金の問題じゃないのよ。
私のプライドが許さないの。
長い間私を裏切り続けて、その上に酔っ払って暴力をふるって、私がどれだけ傷付いたと思ってるのよ」

「悪かった、謝るよ」

桂司が玲子に謝罪したのは、結婚してから初めてだった。

だが、それくらいの事で玲子の気がすむ筈もなかった。


< 20 / 42 >

この作品をシェア

pagetop