堕ちていく二人
反撃
桂司が自宅マンションへ帰ってきたのは一ヶ月後の夜だった。
裕也は既にぐっすりと眠っていた。
玲子が自分の部屋で音楽を聴いているところへ、珍しく桂司が入ってきて話しがあると言った。
玲子と桂司はリビングへ行き、ソファに向き合って座った。
「話しって何よ」
玲子は邪魔くさそうに言った。
「僕と離婚してくれ」
「冗談じゃないわ。そんな簡単に離婚なんかしてやるもんですか。
裕也が大人になるまではしっかりと働いてもらうからね」
「お金なら纏まった額を渡すから」
「お金の問題じゃないのよ。
私のプライドが許さないの。
長い間私を裏切り続けて、その上に酔っ払って暴力をふるって、私がどれだけ傷付いたと思ってるのよ」
「悪かった、謝るよ」
桂司が玲子に謝罪したのは、結婚してから初めてだった。
だが、それくらいの事で玲子の気がすむ筈もなかった。