堕ちていく二人
母親の千代はみんなのやり取りを黙って聞いていたが
「玲子がそこまで言い切るなら、しばらく様子を見ましょう。でも、万が一また手を出されるようなことがあれば、直ぐに裕也を連れて家を出なさい」
玲子の顔をしっかりと見つめて話した。
玲子は少し涙ぐんだ。
「そうだよお姉さん。お母さんの言うとおりよ。今度万一のことがあったら、いつでも私の家に来てね。ねえ貴方」
「勿論だよ。お姉さん遠慮しなくていいんですよ」
「みんなありがとう」
玲子は精一杯の笑顔をみせた。
桂司を支配している自信が玲子にはあった。
母親や妹夫婦には桂司に誓約書を書かせたとまでは言ったが、桂司と玲子の立場が逆転し桂司を思うのままに従えているとまでは言わなかった。
玲子と裕也はGW中真紀の家に世話になった。
幸い好天が続き、みんなで海遊館やUSJへ出掛け、楽しい一時を過ごすことが出来た。
滋賀県へ帰り際、大阪駅の改札口前で
「お姉さん、何かあったら直ぐに電話してね」
真紀が念を押すように言った。
玲子と裕也は真紀に見送られながら大阪を後にした。
(つづく…)