堕ちていく二人
バスル−ムから出てきた玲子は水滴を拭き取り、そのバスタオルを身体巻いて、裕也を子供部屋へと運んで行き、寝付くまで添い寝をしてやった。
30分も経つと裕也は泣き疲れと母親が側にいる安心感とでスヤスヤと寝息をたてていた。
朝になって玲子は今まで通りに裕也を幼稚園の送迎バスに乗せ、笑顔で手を振り裕也を見送った。
その後、近所のホ−ムセンタ−でのこぎり・鉄アレイ・ガムテ−プを購入した。
マンションに戻った玲子は、バスル−ムで死んで冷たくなっている桂司の身体をのこぎりでバラバラに切断し、ビニール袋に頭部・胴体・手・足をそれぞれ分けて詰め込み、ガムテ−プでグルグル巻きにした。
バラバラにされた遺体は、タイのプ−ケット旅行の時に使った二つの大きな旅行カバンに入れた。
カバンをクローゼットに隠すと、バスル−ムの床や壁を強力洗剤で丁寧に洗った。
一連の作業を一通り終えた玲子はタバコに火を付けベランダに出た。
愛してはいないとはいえ夫を殺し遺体をバラバラに切り刻んだというのにもかかわらず、玲子は落ち着いてタバコをゆっくりとふかしていた。
春の暖かい陽射しと、琵琶湖から吹いて来るそよ風が玲子には心地よく感じられるのだった。
(つづく…)