堕ちていく二人


三人はア−カスのレストラン街でイタリアンのランチを食べ、プリクラを撮った後で浜大津港へ向かった。

玲子と貴之は5年ぶりの再会だったが、昔のように会話が弾んだ。

琵琶湖沿いの遊歩道を歩いていると湖面から冷たい風が吹いて来たけれど、今日の玲子には気にならなかった。

ミシガンは運良く5分程待っただけで浜大津港を出港した。

飛行機や船等乗り物が大好きな裕也は、先程までと打って変わって無邪気にはしゃいでいた。

玲子と貴之はミシガンのデッキの先端で流れ行く景色を眺めながら、昔の思い出話しを懐かしむように話した。

そして、映画タイタニックのワンシ−ンの真似事をして、子供のように戯れた。

楽しい時間はあっという間に過ぎ、ミシガンが浜大津港に帰って来る頃には西に陽が傾いていた。

船上から貴之と一緒に見る夕焼けが、今まで空虚だった玲子の心に染み渡った。

「貴之君、今日は本当にありがとう。また会えるかしら」

「勿論いいよ。滋賀と京都は近いし、僕もまた玲子ちゃんに会いたいから」

そう言って、二人は指切りをしながらまた会う約束を交わした。


(つづく…)


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