【完】笑顔
「はぁ…。」
そうこうしているうちにドンドンひどくなる雨。
「どうしよぉ。」
『萌?』
後ろから聞こえた愛しい人の声。
「尚人?」
平然としたように言うけど本当は心臓バクバク。
『どうした?もしかして傘ない?』
「ぁ、うん。」
『俺の傘入ってくか?』
「へッ!?」
思いがけない一言。
『家隣だし。』
「ぁ、ありがとッ!おじゃまします!」
そう言ってあたしは尚人の横に並ぶ。
2人で入っているから狭いビニール傘。
でも、あたしはちっとも濡れていない。
それもそうだ。
あたしが濡れないように傘をこっちに傾けてくれているから。
その証拠に尚人の肩が凄く濡れている。
「尚人!メッチャ濡れてるじゃん!あたしはいいから!」
そう言ってあたしは尚人の手を押し、尚人のほうへ傘を傾ける。
『いいんだよ!女なんだから遠慮すんじゃねぇよ!』
そう言ってあたしのおでこにデコピンする。
「痛ッ…。ありがと。」
『ん。それでよろしい。』
尚人は優しい。

尚人…大好き。

心の中で…そうつぶやいた。

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