地味男子
 少し微笑んだ彼はもう一度本に目を落とした。


 邪魔はいけないね…。




 そっと気付かれないようにその場を離れた。



「あっ、柴乃いたぁ!! どこ行ってたの~、探したよっ♪」

「ごめん、ごめん」

「なんかいいことあったでしょ? 嬉しそうだね」

「そう?」



 嬉しそう…?



 私でも顔に出るんだ。



 なんか恥ずかしいな。



 ベルが鳴って教室に戻るといつの間にか戻ってきてる彼。



 ヤバい…マジでなんて呼ぼうかな。


「柴乃ちゃんっ!!」


 柴乃ちゃん!?


 彼がそう呼んでくれた?


 一瞬そう思ったけど、彼のきれいな声じゃない。


 蒼井だ。

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