意地悪なヒト
「あ、いいんちょー、どこ行くの?」
ドア付近でたむろしていた梶原くんが私に声を掛けてきた
「別に、関係ないですから。」
冷たく、いつものように返事を返した。
「いいんちょ?」
“いつもの私”に首を傾げる梶原くん
気にせず私は教室から出た。
向かう宛もないのに
しばらく歩いて
仕方なく、音楽室に向かった。
鍵は開いているが
普段からあまり出入りの少ない音楽室
使うのは、授業の時だけだ。
静かに扉を開き、中に足を進めた。
誰もいない。
そんな空間が私を安心させる。
ヒトリが落ち着くんだ。
何度もそう呟いて
窓のそばまで歩み寄る
4階にある音楽室が一番
空に近い。
本当は屋上に行きたいが
生徒は出入り禁止で
行けないのだ。
「はぁー…」
また一つ大きなため息を吐き出し
窓から空を見上げた。
汚れのない、綺麗な空が私を包み込む
ううん、包み込んでほしい