キミ
風香の涙声の返答を、容赦なく切り捨てると、私は小さく溜め息をつく。
「力に自信がないなら、特訓手伝ってあげるから。」
「……………。」
子供を宥めるような声に、風香は、顔を真っ青にさせたままで、首を勢いよく左右に振った。
「それなら結構。ほら、中等部ついたよ。」
「ほっ、本当だ!それじゃ、また後で!!」
すっと、目の前の建物を指差すと、風香は逃げるように走っていった。
「……少し、いじめすぎたんじゃねぇか?」
凛とした、低い声。
その小さな背中が校舎に入っていくのを見届けて、歩き出した私に、奏也様が呆れたように溜め息混じりの声で言った。
「そうかも知れませんね、だけど……」
「だけど?」
言葉の続きを促すように、奏也様は、私の言葉を繰り返す。
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