キミ
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「……それは世界の始まりであり、神の導きによって創られるのです。」
アルファベットが並ぶ最後のページを読み終えると、誰にも気づかれないように、小さく息を吐く。
何の反応も示さない先生に、教科書から顔を上げると、そこには満面の笑みを浮かべた女。
「パーフェクトね。流石は学年主席、とでも言うべきかしら?」
みんなも火原さんを見習うように!と彼女が言った瞬間、クラス中が拍手の渦に巻き込まれる。
それに答えるように、ふわりと笑った後、音を立てることなく自分の席に座る。
私に背を向けて、黒板の前で解説し始めた先生を確認すると、ゆっくりと窓の外を見る。
こうしていれば何処にでもいる、普通の女子高生なんだ。
オシャレに気を使ったり、友達と寄り道したり、恋をしたりする……。
悪魔さえ見えなくて、退治する力を持っていなければ。
そして、神崎一族の炎の守護者になんて選ばれることがなければ。
左手の中心に浮かぶ印を握りしめて、「それでも…、」と唇を噛みしめた。
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