キミ




「昴は、もし今ここに悪魔が攻め込んできたとしたら、手加減しちゃうんだ?」



「……っそれは!」



「訓練も実践も一緒、そんな生半可な気持ちでやってるんなら……死ぬよ?」



昴(スバル)と呼ばれた青年は、じっと優妃の顔を見つめた後、「すいませんでした」と頭を下げた。



「まぁ、次から気をつければいいから。」



「次からは、2番隊副隊長の名にかけて、全力で挑みます。」



「頼りにしてるからね。」



「はいっ!」



隊長を守れるようになります、と嬉しそうに顔を綻ばせた彼に、ニヤリと意地の悪い笑みを浮かべる。



「それなら明日から練習メニュー、二倍に増やそうか。」



「えぇっ!?」



冗談だよ、と顔を真っ青にした昴に笑い混じりの声で告げながら、詠唱が飛び交う廊下を歩く。



「隊長、どこ行くんすか?」



「今日は、私とちびっ子隊長が、奏也様の護衛当番だから。」



鈍い音を立てながら頑丈な鉄の扉を開くと、不満そうな顔をする昴に「また今度ね」と微笑んで部屋を出た。






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