瓦礫の下に君がいる
思わず出た自分の言葉に僕は動揺した。やはり知っていたのだ。京介はふみが子を宿し、産んだまま捨てたことを知っているのだ。


「その子を見に来ていたんだろう?」
 

京介はまたふみの髪をなでた。


ふみは唇をぎゅっと結んでいる。知られたくなかった。


そんな顔だった。


それは京介になのだろうか。


それとも僕になのだろうか。


「だから俺は探した。瓦礫の下にいるかもしれないふみを探したんだ」
 

京介がそこまでふみに執着する理由がわからなかった。


けれど、たしかに京介の目の脇で傷は赤くなっていた。
 

あれはふみがつけたのも。


一生忘れられないようにしてやると、僕と二人で逃げるよりも前につけたもの。


ふみはあの頃、たしかに京介に恋をしていた。


今ならそれがわかった。


その時の感情をその姿のまま残しているからふみは離れるのが怖いのだ。


京介が手を離すたびに不安を隠せなくなるのだ。
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