瓦礫の下に君がいる
いつもふてくされた顔をしているのはそれを隠すためだと思う。


だって、僕にはあんな顔はしない。


いつも元気なんだよと、そんな姿ばかり見せていた。
 

本当は寂しいけど、元気なんだよと。


だからさっきも僕が帰ってくるまで泣きそうになりながら足を三角に折って、寂しくない、寂しくなんてないと呟いていたに違いない。
 

今も昔も、血がつながっているのかさえわからないのに、ふみにとっても僕はきっと他にはいない存在なんだ。


僕はふみにとって、特別な関係、大切な兄なのだ。
 

それを思い知らされる瞬間はたくさんあったのに、そんなはずがない。


もしかしたらふみは女として僕を見ているかもしれない。


そんな期待をよせ続けたのは、ふみの妊娠に気づきもしなかったあの子供時代の負い目なのかもしれない。


「あの子が誰の子なのかなんて聞かないよ」
 

ふみは京介の体に腕を巻きつけて下を向いた。
< 12 / 15 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop