1章
風薫る晩秋の頃、私は大学構内を散策していた。日が低く差し、少し寒い季節が私は大好きである。そんなことを思いながらただぼーっと歩いていた。何気なく上を見た瞬間、信じられない光景を目にした。人が降ってきたのである。目の前で果物が崩れるようなぐしゃっという、なんとも心地悪い音とともに私の足元には血だまりができていた。

人が目の前で死ぬことさえも見たことがないのに、ましてや誰が空から降ってくる人間を見たことがあるだろうか。ドラマや映画で見るような綺麗ごとではない、明らかに致死量と思える血が眼前に広がっている。しかし、私はそんな場面に直面しながらとてつもなく不謹慎なことを考えていた。

“美しい"

と。いまだになぜその感情が湧き上がったのかは分からない。
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