ふるさと
Episode3
 はぁ…。
 昔から人前で話すのも自分から何かをするのも苦手だった。今日のゼミでも何もできなかった。そんな自分に嫌気がさす。
 
 ため息をついてバスに乗りこんだ。一番後ろの座席に麦わら帽子を被った王子さまが座っている。
「今日は畑に行こう。」

バスは静かにスピードを上げた。


***
 
 今日は畑の横にバスが止まった。少し離れたところでおじいさんが草取りをしている。

 畑は緑がきれいだ。王子もおじいさんの所に行って草取りを始めた。二人して麦わら帽子を被っていて、なんだか面白い。僕は畑を歩いて回った。
 
 いろんな野菜があるけれど、その中でも背の高い大きな葉っぱが気になった。何か見たことがある気がする・・・。あ、トトロだ!トトロが傘に使っていた葉っぱに似ているんだ。これって野菜なのかな。
 僕はスーパーに並んでいる包装された野菜に見慣れているから、土がついてたり、大きさがまちまちだったりする野菜は見ていて飽きなかった。

 

 すると突然雨がざーっと降ってきた。
 ざっと周りを見渡すけど、雨宿りできそうな所はない。走って家に戻るにもおじいさんがいる。空は真っ暗ですぐに止みそうにない。王子もおじいさんもどんどん濡れてしまう。どうしよう、と思っているとあの大きな葉っぱが目に付いた。

 この葉っぱをトトロみたいに傘で使えばいいかも…でもよくないと言われたら…、
だけど今言うべきだ!

 僕はその大きな葉っぱを茎から三本ちぎって二人に差し出した。
「か、傘にしたらどうかな・・・?」

 二人は少しびっくりした顔をしたけど、ちゃんと傘として使ってくれた。
「わーすごい!傘だ!ね、すごいね?」
「うん、とっても素敵なこうもりだ。」
「こうもり?」
「傘のことさ、これはいいアイディアだね!」
「ありがとう、おかげでもう濡れずにすむよ」
 
 二人がすごく喜んでくれてびっくりした。それに嬉しかった。
三人でおそろいの「傘」をさして家に向かった。
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