キミに届け
冴子?
屋上へと続く階段を見上げる。
そこから冴子らしき声が聞こえる。
覗きは悪いと思いながらも、冴子のことが心配なあたしは気づかれないように抜き足差し足で階段を上っていく。
案外と近くにいて、あたしは慌ててピタリと足を止めた。
聞こえてくるのは荒々しい冴子の声。
初めて訊いたその声に、あたしは少しビビッてしまった。
…冴子?
今にも泣き出してしまいそうな、けれどどこか怒っているような声。
どうやら誰かと電話で話しているようだ。