キミに届け
「誠くん」
思っていたよりも大きな声が出た。
それだけで頑張ったなあたしって思う。
まだなのに。
これからなのに。
誠くんのビー玉みたいな綺麗な瞳があたしを捕らえる。
それだけでドキっとなって目を逸らしたくなるけど、逸らしちゃいけない気がしたから、高鳴る胸を押さえてじっと見つめた。
誠くんは疑問符を頭に浮かべたままあたしの名前を呼ぶ。
「どうしたの、奈々ちゃん?」
相変わらず穏やかで優しいその声。