キミに届け



あたしは前を向いたまま口を開ける。



「誠くん」



「ん?」



「ありがとう」



あたしはそう言って、誠くんの方を向いて笑った。


けれど、誠くんは笑ってはくれなかった。



終わりだな…。



強風と共に電車が駅に流れ込んでくる。


あたし達は無言のまま電車に乗り込んだ。



終わる。


誠くんとのデートが。



もう二度と来ない幸せの時間が。



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