キミに届け




誰? なんて訊かなくてもすぐに分かる、その穏やかで優しい声。



正直笑顔以外は見せたくなかった。


けど今のあたしにそんな余裕なんてなくて、堪えても溢れ出してくる涙を目に溜めながら、声にならない震えた声で必死に言葉を紡ぎ出す。




「…っど…うし…」



けれど、あたしの声なんてかき消す勢いで。



苦しそうに呟くのは―――…



「奈々ちゃんのせいだ」



―――…誠くん。



誠くんがここにいた。



確かにここにいて、あたしをぎゅっと抱きしめている。


何が起こったのか分からないあたしは、ただそのぬくもりに溺れながら静かに涙を流すことしかできなかった。




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