キミに届け





言葉を切ると短く間を開けて。




「…でも奈々ちゃんとデートしたとき、何か違う気がした」




小さく呟くその言葉からは、いろいろな感情が見えてきた。



言いたいことがまとまっていないのか、時たま誠くんは「あ゛ー」っと恥ずかしそうな声を出して、前髪をくしゃくしゃっと乱す。


そして言葉が見つかると言う、の繰り返し。



「…奈々ちゃんはずるいよね」



「ずるい…?」



「お金じゃ買えないものってきっとある、なんて俺の心に一番突き刺さる言葉だって」



そうふてくされたように言う誠くんがすごい可愛く見えてしまった。


見ているだけじゃ綺麗としか思えないのに、近づいたら可愛い一面もあるってことを知った。



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