アイ・マイ・上司【完全版】
どういう、コト・・・?
「今は鈴の課長じゃない・・・」
「っ――」
浮かんだ疑問が答えに導かれたのは、すぐのコト。
カウンター内の狭さに戸惑いを感じつつ、触れる箇所は熱を帯びていた…。
“課長じゃない”と言われても…。
「い…、いなばさん?」
「稲葉はダメ」
私の出したフツーの“さん”付けに、精悍な顔から笑みが消えてしまう。
「え、そ…それなら、先輩…?」
向けられた眼差しで居心地が悪くなりつつ、再び呼んでみたのに。
「それも違う」
「えー…っ」
「今の俺は、ただの男だけど?」
「っ・・・」
クスッと一笑した課長に、ジリジリと追い詰められた私はついに。
「ひ、ひ、か…るさん…?」
目をギュッと瞑りながら、思いきって呼んでしまった。