アイ・マイ・上司【完全版】
否定する度、チクン、チクンと、痛みを伴う感情が押し寄せるのに・・・
「私なんかに、冗談は止めて下さい…」
彼が向ける眼差しは、勘違いを起こしそうで。
ソレを避けるように、パッと視線を逸らしてしまった。
彼とまったく無縁なドジさが、ただ物珍しいだけ。
仕事の鬼と評される彼だから…、ただソレだけ。
ファジー・ネーブルが無くなったと同時に消える、まやかしだよ…――
すると課長がグラスを手に取って、ウイスキーのロックを飲み干した。
その刹那、ダンっとグラスを置く音がカウンターに響く。
ムードを打ち壊す響きに、周りのお客さんと同様に私も驚かされる。
そうして捉えた、課長の鋭い視線にも・・・
「そんなに信じれないなら、一番分かりやすい方法で教えてやる…」
「・・・え…」
課長、どうしたの…?
珍しく怒気を含んだ物言いで、ササッと素早く会計を済ませると。
ボー然としていた私を、カウンターチェアーから強引に引っ張り上げた。