アイ・マイ・上司【完全版】
そんな目で、ジッと見つめないで下さい。
私を一夜限りの、遊び相手にするだけでしょう?
ファジー・ネーブルで惑せるのも、常套手段ですよね?
暗がりの中で逃げるように、課長のネクタイを眺めていた私。
あからさまな態度にも、真っ直ぐな眼差しを向けてくる課長はズルい――
「どうして、私なんですか…?」
そう思う時点で、何かが始まっている気がしたけど。
腑に落ちないからこそ、勘違い発言を覚悟で尋ねてみた。
「んー、好きになったから?」
「そ、そんなの信じません…!」
頬を撫でる指先の感触に、ビクビクしながら否定をする事が精一杯だ。
彼クラスの男には、甘言で酔わせるコトも朝飯前。
集る(たかる)中で、たまたま目に留まったのが私。
そうしか思えないから、怖いのよ。
貴方のすべてが見えなくて、何もかもが曖昧だから…――