アイ・マイ・上司【完全版】
「それじゃ、頼んだよ…?」
散々に揺さぶりながら、フッと一笑するのは大罪よ?
「…っ、はい」
惹きつけられていると、解っていながら…――
彼の一挙手一投足に惑わされた挙げ句、鼓動が高鳴るのは私だけ・・・
そうして踵を返して行く課長に、一礼をしてから席についた。
まだ名残惜しい心情を表すように、視線は彼を追ってしまうけど。
――私に限ったコトではない。
闊歩する後姿もオーラと色香を纏う彼には、女性社員の熱い視線が注がれているもの。
・・・ホント罪なオトコ。
ドクンと脈打つ鼓動を沈めようと、内心ではそう悪態をついていた…。
私は、斉藤 鈴(サイトウリン)。
24歳を迎えたばかりの、謙遜どころかホントにしがないOLで。
大学卒業後に入社したのは、現在も勤めるIT関連企業。
初めて内定を貰えたのがこの会社で、嬉しさから就職先に決めたのだ。