アイ・マイ・上司【完全版】
オフィスからでも、ジリジリと焼けるような暑さが伝わる8月終わり。
新入社員も一連の作業を覚えて、すっかり欠かせない存在になっていた…。
ある日、普段は利用しない資料室へと参考資料を求めて向かった俺。
過去の決算書に予算勘案書、あとは…――
必要な物を脳内で整理しながら眼前のドアを開ければ、思いもよらぬ人物に遭遇する。
「あ、課長、お疲れ様です。
どうなさいましたか…?」
「…あぁ、俺は色々探しにね。斉藤さんは?」
山積みされた資料の中で、その小さな身体まで埋もれていた彼女。
「えと…、私は整理整頓を頼まれて…」
「そうか、ご苦労さま」
「はい、まだまだ掛かりそうですけど…」
誰に対しても変わらない、人懐こい笑顔を俺に向けると。
再び視線を大量の書類へ落とし、ファイリング後に書棚へと戻し始めた。