アイ・マイ・上司【完全版】
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「無理しないでよ?」
「うん、大丈夫。ありがとう」
頷いた私の反応に不服そうな顔つきではあるけど、セミロングの髪を靡かせて涼子が退社した。
美人で仕事も出来るけれど、優しい彼女。
これまで頑張ってこられたのも、励ましてくれた涼子の存在が大きい…。
もう心配をかけまい!と気合を入れ直して、順々に静かになるオフィスで残業を始めた――…
経理は傍目より、苦労が絶えない部署だと思う。
数字と知識の疎さに、何度泣きたくなっただろう?
経理って楽かも?などと考えていた、入社直後の自分を呪いたい。
月末月初と決算前後の慌しさを経験し、自分の出来る範囲の狭さとドジ加減も分かって。
今の私はもう、会社に足を向けて眠れない。