アイ・マイ・上司【完全版】
お酒によって上昇途上の体温とは裏腹に、冷静な思考回路。
ソレが幸いしたのか、暫くして酔いは随分と醒めてくれた。
トイレの個室から若干フラフラしつつ出れば、鏡面に映った真っ赤な顔に嘲けてしまう。
外見は酔っ払いなのに内面は素面という、アンバランスな私――
これでは“まだ大丈夫”とか言われて、飲まされること請け合いで。
また飲む事になれば、次こそ吐いてしまいそうだ。
ソレに今から戻っても、出来上がった場についていけそうにもないし。
なんだか、この冷静さが仇になった気分…。
このまま、タクシー捕まえて帰ろうかな?
来週の朝に、笑って言い訳すれば良いよね?
そう溜め息をついて、トイレの扉を開けたのに…――
「斉藤さん、大丈夫?」
「…え?」
扉を開いた先で捉えた人と言葉に驚かされて、目を見開いてしまった。