終わらない歌を歌おう
 楽器を扱う人にとって“手”“指”は命。

 ギタリストやドラマー、ピアニスト様々な音楽家は手を大事にする。

 ボーカリストはもちろん声が命。

 だからパパはツアー中やライブ前日は大好きなお酒を決して飲まなかった。

 そんなパパにお構いなしにメンバーのみんなは飲んでいた。

 特にツアー中は地獄だったらしい。

 あたしが一度見たときはみんなはお酒。パパはお湯を飲んで「お湯がうまいね~」とか訳の
分からない事を言っていた。

 そんな事を思い出しながらさすった。

 すると頭を手で覆われぐしゃぐしゃと撫でられた。

「何すんだよ~」

「お前がいつまでもんなしんみりしてっからだろ。大丈夫だから心配すんな。俺橋本駆。お前
は?」

 顔をあげると駆はニカッと爽やかな笑顔をあたしに見せた。

 あらイケメンだこと・・・

 でもパパのがかっこいいもん。

 て、何マイワールドにトリップしようとしてんだ。

 危ない危ない。

「あたしは矢戸呉羽。呉羽って呼んでね!」

「おう!よろしくな呉羽」

 目の前で大きな手が差し出される。

 あたしはそれを強く握りブンブン振った。

「よろしくね!駆」
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