【短編】クロスロード ~ェンジェル~アルバム~
「いつも有難うございます」

背後から園長先生の声がして、澄香は振り向く。

見ると、園長先生が、
おばあちゃんに丁寧に頭を下げて挨拶をしながら、
二人は、玄関へと歩いてきた。


― あっ、
あの時のおばあちゃんだ ―


サンタと同じ匂いのした、
園庭のブランコに
子犬といた
おばあちゃん。


「では、失礼します」

「有難うございました。
お気を付けて」



澄香がじっと見上げていると、
おばあちゃんは、
目を細めて、
澄香の頭を撫でて
玄関を後にした。



「あの人だぁれ?」

修斗が、園長先生に尋ねる。

澄香は、園長先生の顔を見上げる。

「富士崎様よ。
毎年、園に寄付をしてくださる方よ」

「寄付してくださるの?」

「そうよ。

澄香ちゃんや園の子どもたち皆が、
幸せに暮らせますように、って」

「じぁあ、
命の恩人だ!」

「あぁそうね。
修斗くん、良いこと言うわね」


― 命の恩人 ―…


「さぁ~、
食事にしましょう」


園長先生は、
子どもたち全員に聞こえる様に言いながら、
廊下を歩いて行った。


「じぁあ、
俺、帰るなっ」

修斗が澄香に言っているが、
澄香は、おばあちゃんの歩いて行った方を、
じっと見ていた。


「澄香?どうした?」

突然に
澄香は、外へと駆けて行った。


「お、おいっ澄香、
何処に行くんだよ」

修斗は、後を追う。

澄香が門の方へと駆けて行くと、

門の所におばあちゃんがいた。

門に繋いでいた子犬のリードを取っている。


澄香は、
ゆっくりと
おばあちゃんの所へと歩いて行った。

そんな澄香の様子を
修斗は、
不思議そうに見つめる。

澄香が、
おばあちゃんの近くまでいき、

ありがとうございます

と言おうとした
その時、

― えっ ―…


おばあちゃんの目から、
一粒の涙が落ちた。


おばあちゃんは、

泣いていた…
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