【短編】クロスロード ~ェンジェル~アルバム~
春が過ぎ


梅雨がきて…


― あ…
真梨子お姉ちゃんが
お嫁さんになった季節がきたぁ… ―


澄香は、
雨上がりの虹を見ながら傘をたたむ。


家に帰りつくと、

「おかえりぃ~♪」

いつもの様に、
真梨子は笑顔でキッチンにいた。

「ただいま」

澄香はホッとする。

「着替えてくるね」

「うんっ」

澄香は自分の部屋へ行き、制服から部屋着に着替えると、
洗面室へ行った。

手を洗い、タオルで拭きながら
なにげなく鏡を見る。

ふと、
鏡の前に置いてある
白い袋を見つけた。

真梨子の名前が書いてある。

「処方箋?
カゼでも引いてるのかなぁ」


澄香はリビングへともどると、
真梨子に尋ねた。

「真梨子お姉ちゃんっ」

「ん?なぁに」

「カゼ引いてるの?」

「え、」

真梨子の表情がくもった。

カゼ?と聞いただけなのに、と、
澄香は、
何かまずかったのかなと不思議に思う。

「う、ううんっ」

真梨子は
すぐに笑った。

いつもの笑顔になった。

「あぁ。
薬の袋があったから?
何でも無いのよ~
前もって用心のためっ」

「そっか」

「うんっ」

笑顔の真梨子に、
澄香は、
すんなりと納得することにした。

< 59 / 77 >

この作品をシェア

pagetop