【短編】クロスロード ~ェンジェル~アルバム~
それから、

真梨子が洗面室へと駆けていくことは度々あった。

そして、

その回数は次第に増えていき…




澄香は、
やはり不自然だと思い、
しかし、
真梨子本人に直接尋ねるのは、
やはり
聞きにくく…


澄香は、
淳一に聞こうと意を決した。


ある日。


その日も真梨子は、
珍しくひとりで出かけて行き…


― あっ… ―


澄香は、
淳一に聞くなら今だっ、と、
リビングへと行った。

「あれ?いない

出かけたのかなぁ」


澄香はソファーに腰かけて、

「ふぅー…」

珍しく溜め息をついた。


ふと、

「あれ?」

今までなかったはずの仕切りがあるに気づく。

テラスからダンスフロアへと続く、
一段高くなった通路の一角に仕切りが。

澄香は、
不思議に思いながら、
徐に歩み寄った。

「何だ?…ん?」

仕切りの中から、
うっすらと音楽が聞こえてきた。

「何?ここ…何で?

あ、お兄さん?」


澄香は、ノックをしてみた。

返答は無い。


仕切りの端が隙間があって、
澄香は、なんとなく覗いてみた。


「あらっ」


見ると、

淳一が、
ヘッドホンをしながら目を閉じて、
一人掛けの黒いソファーに仰向けに横たわっていた。


― お兄さん、こんな所にいたの。

でも…何で…

こんなスペース、
いつの間にか作ってたんだろ… ―


澄香は、疑問に思いながらも、声をかけずにそっとしておいた。
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