【短編】クロスロード ~ェンジェル~アルバム~
それから、

真梨子は度々一人で出かけていき、

そして、淳一は、
仕切りの奥で
一人、
自分の時間に浸る。


そして、真梨子は、
帰宅するやいなや淳一の名前を何度も愛しそうに呼んでは、
二人は抱きしめ合いながら、
部屋へと入って行った。

防音抜群なので、
声は全く聞こえないので、
澄香にとっては心配ないが。

― まぁまぁ
仲のよろしいことで ―

澄香は、微笑ましく思いながらも、
年頃の娘には、声すら聞こえないが刺激は受けるので、

なるべく気に留めずにいることを心掛けた。

――――…

ある日。


また、真梨子はひとりで出かけて行き…

「また、何も言わないで…様子も変だし……
一体、どこに行ってるのかなぁ」


やっぱり
淳一に聞いてみようとリビングに行くと、
仕切りの奥へと入って行く淳一を見つけた。

澄香は、
今度は覗いてみた。

「なぁにしてるの?」

「えっ、」

一瞬びっくりした淳一だったが、直ぐに微笑み苦笑いした。

「バレたか」

「バレるわよっ、
同じ家にいるんだから」

「あぁ、ハハハ…だよな」

「なにぃ?秘密基地?」

「アハハ…
どうぞ」

「いいの?」

「うんっどうぞ」

淳一の微笑みに、
澄香は、ゆっくりと中へと入った。

オーディオセットで囲まれた、一人分スペースの場所。

白い仕切りが、
他からの目隠しとなり…

「まるで隠れ家ね」

「秘密の場所なんだ」

「ふぅ~ん。
でも、どうして?」

「こんな場所を作ったのかって?」

「うん」

「…一人になりたかった…」

「え、…お兄さん…なんか悩みごとがあるの?」

「あぁ…まぁね」

そう言って、
淳一は遠くを見つめた。

澄香は聞いたものの、
次の言葉を何てかけたら良いのかわからず、
ただ、そんな淳一の横顔を見つめる。


「真梨子は、
俺を呼んで
すぐに俺の返事がないと、凄く不安がるから。
ここだと、
同じ家の中だから
いいだろう?」

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