【短編】クロスロード ~ェンジェル~アルバム~
仂哉の運転する車は、
とある雑貨屋に着いた。

「ここ?」


仂哉が、貴重な花瓶だと言っていたので、
骨董品などがある雰囲気の店かと想像していた澄香は、
雑貨屋に着いたことに、何だか予想と違って不思議な気分だった。


― もっと、高そうな店かと思ってたぁ…
ここにあるんだ? ―


「入ろう?」

「あ、うん」


不思議そうに思う澄香をヨソに、
仂哉は、すたすたと店の中に入っていく。

澄香も急いで後について入った。

店内には、
可愛らしい雑貨が沢山ある。

― どこにあるんだろう ―


澄香が、
うろうろと探していると、
仂哉は澄香に歩み寄りながら手招きした。


「あ、あったの?」

駆け寄る澄香を見ながら、仂哉は、
棚を指さす。


「あっ、これこれ~、
良かったぁ」


澄香は思わず喜んで、
棚の花瓶を手にして
レジへと持って行った。


「いらっしゃいませ。
1050円です」


― 貴重な花瓶って言っていたけど…

別に高いものじゃなかったんだぁ ―


澄香は御会計を済ませて、
ホッとしながら店を出た。


再び、
仂哉の車で学校に戻る。


「仂哉さん、有難う」

「いいえ、どういたしまして」

「あ、」

「ん?」

「貴重な花瓶って言ってたけど、
なんで貴重なの?

誰かの贈り物なの?」

「あぁ~、花瓶?

あれはねぇ~、

ウソっ」


「へっ?

ウソ?」


「ウソ」


「ウソ?…どゆこと?」

「俺がとっさに作った作り話っ」

「え、…、えっ?じゃあ、貴重な花瓶じゃないの?」

「うん。別に知らない花瓶」


澄香はわけがわからずに、きょとんとなる。

「なんで?作り話なんかを?」

「すんなり信じるもんっ、あぁ~面白かった♪」

「ひっどぉーい。

意味わかんないぃ」


呆れ膨れ面の澄香を見ながら、
仂哉は、
意地悪く笑っていた。

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