迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*
好きの気持ち
「暑っ……」
図書館を出た途端、
むわっとした熱気に包まれた。
「夏だからねぇ」
航くんは平然と言ったけど、
私は顔を歪めたまま。
暑いのは、苦手。
夏になると、なるべくクーラーがきいた部屋から出ないで過ごす私。
「早く、秋にならないかなぁ……」
思わず呟くと、
「秋って……夏になったばっかりじゃん」
呆れたように笑う航くん。
なんか、去年も同じような会話をした気がするなぁ。
これからもっと暑くなると思うとうんざりする。
はあっ…
ため息をつきつつ、のろのろ歩き始める私。
「ほら、早く」
それを見かねた航くんが私の腕を引っ張って歩き出す。
暑いのに……
こうして手を繋いで歩くことは、嫌じゃない。
むしろ、それを待っている私がいる。
自分からは、できないから……