迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*
航くんにとっては、それが最大の謎らしく。
もうずっと、意義を唱えている。
なんでそこまで?と思い続けていた私に、
「もし、同級生だったら……」
ある日、航くんがぽつりと呟いた言葉。
「もっと早く出会えて、
もっと早くから傍にいられたのに……
そしたら、
あいつなんかと会わなくてすんだのに」
遠くを見つめる瞳には、
明らかに憎しみが溢れていた。
それを見て、私は確信したんだ。
……あぁ。航くんはやっぱり気にしてるんだな、って。
まだ、こだわってる。
しかも、たぶん勘違いをしている。
あのときのことを……
……ううん。
勘違いしているのは、私のほうなのかもしれない。
航くんが私の傍にいてくれるのは“好きだから”じゃなくて、
あの人に“見せつけるため”それだけなのかもしれない……
あの人が唯一手に入れられなかった…と思い込んでいる“私”を、手に入れたかっただけ。
そしてそれを、相手に知らしめたいだけ。
でも、
たとえそうだとしても、私はそれでもいい。
こうして航くんが居場所を与えてくれるなら、それでいい。
私は、離れるつもりなんてないんだから―――