迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*
「あ、そうだ。俺さ、」
寝る間際、ぴったり寄り添っていた私の身体を抱きしめ直しながら、
「来週…夏休みに入ってすぐ合宿があるんだ」
思い出したように、航くんは言った。
そっか。あと2日も行けば、夏休みだった。
ぼんやり考えていると、
「ま、3年生はちょうど夏期講習があるし、大丈夫だよね?」
明るい航くんの声。
「……何日間だっけ?」
顔も上げずに、少しの不満をこめつつ聞くと、
「5日間」
あっさり返された。
5日…か。
思わず黙り込む私に、
「あ、やっぱり寂しい?」
からかうように言って、顔を覗きこもうとする。
意地でも見られたくなくて、さらにきつく抱きついて顔を隠す。
そんな私を笑いながらも、
「素直じゃないなぁ」
航くんは嬉しそうに再び私を抱きしめた。