迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*
「冗談だって。
まったく、なんでいつまでたってもそんな可愛い反応をするかなぁ。」
おそらく真っ赤になっているであろう私を見て、楽しそうに笑う航くん。
「何も、今さら恥ずかしがることないじゃん?
もう全部知ってるんだから。」
「なっ……」
さらにかぁっと熱くなる私に、
「ハイ。“とりあえず”着替えね。」
平然とタオルとパジャマを差し出す航くん。
思わず身構えると、
「“出てきてから”しかしないから、心配しなくて大丈夫だってば。」
また笑われてしまった。
「な……」
なんかすごいことを言われてる気がする。
「ほら。早くしないと時間なくなっちゃうよ?」
「な…何の?」
「……さぁ?」
「……っ」
絶対に楽しんでる。
私の反応を面白がっているとしか思えない。
どこまで本気なんだかもわからないし。
いつもそうなんだから。
……そう。“いつも”と同じ。
何も変わらない。
でも……
なんでだろう?
なんだかすごく不安。
胸騒ぎが、する。