迷子の眠り姫〜sweet kiss〜*上*
保健室での秘密
「頭痛と腹痛と吐き気とめまいが…」
椅子に座っている、なじみの背中に声をかける。
保健室の主は、母親と同年代の女の先生。
ちょっとふっくらした年相応の“おばちゃん”で、
明るくて頼りがいがあって生徒に“お母さん”と慕われている。
そんな人。
「また?」
振り返るなり怪訝そうな顔をされた。
いつものこと。
俺は“常連”だから。
「まさか、示し合わせて来たんじゃないでしょうね?」
意味不明なことを呟くと、
くるっと机のほうに向き直ってしまった。
珍しく、仕事かな?
ぼーっと立ち尽くしていると、
おばちゃんは背中を向けたまま、持っていたペンで奥のベッドを指した。
使っていい、って意味だと解釈した俺が、そっちに足を向けると……
「来てるわよ。“彼女”も」
おばちゃんは、ため息まじりに呟いた。