おばあちゃんの思い出

東京にて②

私の考えは甘かった。
美容師になりたいだなんて、どうして簡単に言ってしまったんだろう。

「違う、ちがうわよ。ハサミの向きがおかしいでしょ?
 何回も同じことを言わせないで、しっかり覚えて。」

「すみません、店長…。」


まだ4ヶ月しか経ってないのに
この生活に疲れ切ってしまっていた

「お客様、いかがですか?」

「うーん、もう少し暗めの色に染めてほしかったなぁ…」

「…すみません。」

何でもあると思ってた東京には何があったの?
何で、こんな気持ちになるの?
心からの叫びだった。

「掃除と片づけ位、ちゃんとできるようになってよ。」

「はい…本当にごめんなさい。」

「果穂子さん、今日はとりあえずもう帰っていいから。」



おばあちゃん。私帰りたいよ…。
そう思ってまもなく、私は荷づくりをしていた。

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