おばあちゃんの思い出
トントントン…
階段を上り、二階に上がった。
窓を閉め切ってたから部屋がすごく蒸し暑い。
私は扇風機をつけた。
鈍い音と共にプロペラがくるくる回る。

居間のちゃぶ台にはいつものあずきゆべしがあった。
他のおうちでも食べたことがあるけれど
やっぱりおばあちゃんのが一番だ。
おやつ代わりにと、おばあちゃんは仕事の合間に
それを作って置いてくれていた。

その頃は当たり前だと思っていた味。
今になって気づく
世界中どこを探してもきっと出会えない
おばあちゃんの味。

「おいしい…♪」

「カホちゃーん、行くよー!」
まみちゃんだ!

「待って―、今行くー
 あ、まみちゃんにもあげよーっと♪」
 
わたしは急ぎ足で階段をおりた。


< 3 / 33 >

この作品をシェア

pagetop