空は青色、君は君色
「え?」
「そら。山口空って名前。」
羽が見えた気がした。
一瞬、空になってしまった気がした。
「私の名前・・・。」
「知ってるよ。」
言う前に、阻まれる。
「吉田、海だろ?」
涙が出そうになるのを必死でこらえる。
私の名前を、知ってる人がいたなんて。
「呼ばせてやるよ。俺のこと、空って。」
「え?」
「誰にも、呼ばせてないから光栄だと思えよ。」
「調子に乗るなよ、空。」
ははっと笑う。
「俺は、海って呼ぶから。」
誰も、呼んではくれなかった名前。
両親さえも、海とは言わない。
涙が出るのをこらえるのが精一杯で、何も言えなかった。
この日から、山口空と吉田海は"特別"になった。