この恋が終わる瞬間を
「静司ー、ハルキー、おはよー」

さやかの声が俺達を追いかけてくる。

「はよ、さやか」

「おはよう」


足音が追いついて、さやかは自然と俺とハルキの間に立った。

長年変わらない、さやかの定位置。


「聞いてよ。昨日宿題やろうとしてたら、お母さんが電話してきて…『今日仕事が終わらなくて帰れないのー』って延々と…」

ふっとため息をつくさやかに、ハルキは明るく笑う。

「残業か?」

「多分ね。仕事が終わらないくらいだったら、長電話してる暇もないはずなのに…」

「おばさんらしいな」

「おかげで宿題するの遅くなっちゃった」

「クマできてるもんなぁ」

「嘘っ」


…ハルキはすごい。

さっきまでの話なんかなかったみたいに、いつも通りさやかと話している。

さやかに内緒って言ったのは俺だけどさ…俺のほうが動揺してる。


「…静司? どうしたの?」

何も言わない俺を、不思議そうにさやかが見やる。

「ううん、俺も寝不足」

「そっか」

ちょっと笑って見せると、さやかもふわっと笑った。
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