この恋が終わる瞬間を

きっかけの一言 sideさやか

*

「よーし、わかった! 中村、ジュース一本でどうだ」

「んー…まぁいいよ」

「やった! ワリィな」

春樹の『ノートを一日貸して』というお願いは、ジュース一本で交渉成立したみたい。

千鶴はかばんを探って、ノートを春樹に渡した。


静司と春樹と別れ、私と千鶴はそろって教室に向かう。

「私が自習の時間に使おうと思ってたのに…」

ぶつぶつと呟く千鶴を、まぁまぁとなだめた。

「いいじゃない、ジュースおごってもらえるんだし」

「まぁねぇ…あ、あいつノートに落書きしないかな」

「落書き?」

「この前も英語の教科書貸したらさぁ、春樹のやつマイクの顔にひげ描いて返してきたんだよ? かわいそうな35ページのマイク…」

おかしくて吹き出すと、千鶴もにっと笑った。

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