この恋が終わる瞬間を

二人の距離は

*

静かな放課後。

物理の教科書を見つめて、さやかは眉間に皺を寄せている。


春樹と中村は、揃って購買へ行ってしまった。

今朝借りたノートのお礼に、春樹がジュースを買ってやるんだそうだ。


―…なぁ、春樹。

お前には、さやかの悲しそうな顔が見えない?

それとも、見えているけど気付かないフリをしてるだけ?


二人を見送るさやかは、ひどく悲しそうな顔をしていた。



「…わかる?」

お手上げとばかりに、さやかは教科書を放り出す。

「全然。どうして答えがBになるの?」

「だからさっき教えた法則を当てはめて考えると…」


うつむくさやかの、長いまつげ。

ふっくらした頬に淡く影を落として…すごく、すごく…。


―…キレイだ。


どうして俺じゃなくて、春樹なの?

春樹は他に、好きな子がいるんだよ。

春樹じゃなくて、俺のこと好きになったらよかったのに…。

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