この恋が終わる瞬間を

届かないなら side春樹

*

「…中村」

「………」

「おい、中村!」

小声で呼ぶと、中村ははっとして俺を見上げた。

「…あ、えと…」

「行くぞ」

「え、どこに…」

その手を掴んで、俺はもと来た道を戻る。


びっくりした。

静司がさやかにキスするなんて。

でも、何よりもびっくりしたのは…偶然それを見てしまった中村が、びくりと固まったこと。


―…中村、やっぱり静司のことが好きだったのか?


そりゃあ、好きなやつと親友のキスなんか見たらショックだろう。

中村は、時々教室を気にしながらも、うつむき気味におとなしくついてくる。


俺、なんて声をかけてやったらいいんだろう?

ダメだ、女心なんて全然わかんねぇ。

(こんな時、静司なら…?)

(………)

(バカか、俺)

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