この恋が終わる瞬間を
「あ…」

ぽろ、と涙が一粒こぼれ落ちる。

「あはは…どうしちゃったんだろ、私。ごめん」

「いや、別に…謝らなくてもいいけどよ」


こいつ本当に静司が好きだったんだな…。

男っぽい中村が泣くのなんて、初めて見た。


「お前さ」

今まで聞かないでいたけど…聞いてみたい。

もう見てるだけじゃ嫌だから。

「静司が好きなのか?」


中村は、せわしなく視線を動かした。

俺、地面、自分のひざ…。

そして、軽く首を振る。

「わかんない。好き…かもしれなかった」

「なんだそりゃ」

「好きだったけど、心の好きにならないようにしてたのかもね…。静司はみんなの王子様だし?」


…女心ってわけわかんねぇ。

好きなら好きでいいじゃねぇかよ。

現に、俺は…静司のことで涙するお前を見ても、やっぱりお前が…―。


「なぁ、中村」

「…なによ」


見つめた顔は、いつかみたいに憮然としていた。

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