この恋が終わる瞬間を
「…ワリィ。困らせたよな。…忘れてくれ」

「忘れろって…」

無理だよ、そんなの。


私は真っ直ぐ春樹を見た。

恥ずかしくて目を逸らしたくなるけど、それはしちゃいけない気がして。


私は静司を好きだったけど、それと同じように春樹は私を好きでいてくれた。

それを伝えるのは勇気がいるから…私にはできなかったようなことだから、忘れるわけにはいかない。


「…私、静司が好きなんだよ?」

「わかってる」

「…じゃあどうして? どうしてそんなに堂々と好きだって言えるの?」

私にはできない。


春樹はちょっと笑って、短い髪をがしがしと掻いた。

「そりゃ、お前を好きだって気持ちは誰にも負けねぇから」

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