この恋が終わる瞬間を
「…どうして急に帰ったのか聞かないの?」


コーヒーの入ったマグカップ。

春樹の分には、ミルクが多めに入っている。

私のはミルクとお砂糖。

それに口をつけて、春樹は目だけで私を見た。


「…なんで鞄も放り出して先に帰ったんだ?」


…なんて答えたらいいの?

静司にキスされたから…って?

…言えない。

春樹には知られたくない。


黙っていると、春樹の大きな手が私の髪をくしゃくしゃに撫でた。

「なんだよー、聞けって言ったのはお前だろ」

「うん…ごめん」

「…言いたくなかったらいいよ」

…春樹は優しいね。


「静司と喧嘩した」と嘘をつくと、春樹は「そっか」と笑った。

< 37 / 59 >

この作品をシェア

pagetop