この恋が終わる瞬間を
*

「あ、静司…」

帰り道の海沿い、静司の姿を見つけて固まった。

静司がそっとさやかに口づけたシーンが鮮やかに浮かぶ。

壊れ物に触れるみたいな、怖々とした優しいキス。


静司がこちらを振り向き、私は曖昧に笑った。

どんな顔をしたらいいんだろう。


あの後、再び教室に戻ると、二人の姿はなかった。

静司は鞄ごと、さやかの鞄はそのままで。

春樹が苦笑して、しょうがねぇやつら…と呟いた。

私は、二人がどうなったのか気になって仕方がなかった。


「…そっか、中村の家ってこっちだっけ」

道路に突っ立ったまま、静司は笑おうとして失敗したみたいな顔をした。

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