この恋が終わる瞬間を
「さやか…?」


ザクザクと砂を踏みしめて、波打ち際に向かって歩き出す。

俺はその後を追った。

さやかはためらいもなく、ローファーを脱ぎ捨ててざぶりと海に入っていく。


夕方と夜の間の独特な色あいの海。


履いていたスニーカーを脱いで海に入ると、思った以上に水は冷たい。

すでに膝あたりまでつかっているさやかを追うと、制服のズボンがぐっしょりと濡れた。


「待って」

その手を取り、小さなさやかを見下ろす。

さやかもぎゅっと手を握り返して、じっと俺を見上げて。

…その目に捕えられる。


手を引かれるまま、俺達はほの暗い海にもう一歩踏み出した。

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