この恋が終わる瞬間を
…このまま静司と一緒に海に溶けていけたらいいな。

母なる海…ほら、生命は海から発生したって言うでしょう?

だから何も怖くない。

静司と二人で、この海に溶けてしまいたい。


すでに腰のあたりまで海につかって、制服は重たい。

だんだん下半身の重力がなくなってきて、足は砂を踏みしめているはずなのに感覚がない。

それでも静司の手は離さなかった。

握り締めると、ぎゅっと強い力で握り返される。

そっと見上げた顔は、皆が『王子様』って騒ぐだけあって格好いい。

暗い海に挑むみたいに、じっと前だけを見据えている。


…私、何してるんだろう。

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